ふぎと屋【溺書ブログ】

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挑戦者の文学【アメリカ文学史4】

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 ようこそふぎと屋へ。今夜も来てくれてあ
りがとう。きょうはアメリカ文学史の中でも、
第2次大戦後の様相を語っていこうとおもう。
お茶でも飲みながら、ゆっくり聞いていって
おくれ。


若者とマイノリティの台頭


 さて、世界を巻き込んだ2度目の大戦は19
45年に終結をみた。そこからアメリカでは、
戦争を様々な視点から描いたノーマン・メイ
ラーの『裸者と死者』(1948)といった作品が
多くあらわれる。特に、当時の若者の間で大
きなトレンドになったのが、J・D・サリン
ジャー『ライ麦畑でつかまえて』やJ・ヘラ
ーの『キャッチ・22』だった。いまの若者が
鬼滅の刃』に夢中になるように、当時のテ
ィーンエイジャーたちは『ライ麦』に登場す
ホールデンの少年性と痛快な語り口にぞっ
こんだったんだ。
 他方、このころから目立ってきた傾向とし
て、それまで文化的に傍流であったマイノリ
ティ・グループの作家たちの活躍がある。ひ
とつはアフリカ系アメリカ人(ようするに「黒
人」だ)作家の台頭だ。その画期となったのが、
1940年に発表されたリチャード・ライト『ア
メリカの息子』だ。彼はこの作品で黒人文学
=抗議小説という定式を確立したんだが、彼
に続く黒人作家たちはそんなところでは満足
しなかった。例えば『見えない人間』のR・
エリソンや『山に登りて告げよ』のJ・ボー
ルドウィンは、「単なる抗議小説としてでは
なく、黒人の置かれた状況と彼らの意識を実
存主義的にとらえ、現代文学としての普遍性
をもつに至った」(小学館日本大百科全書
より)。
 そして1960年代に入って、アメリカはまた
戦争によって大きな転換を迎える。ベトナム
戦争だ。このテレビカメラが初めて戦地に入
ったといわれる戦争は長引き、それに対して
アメリカ社会の厭戦感はいや高まった。こう
した中で、世界政治におけるアメリカの指導
的な役割を根底から見直そうという傾向が強
まってきた。文学もそれに相まってさまざま
に主流のスタイルが変わってきた。だがその
一方で、アメリカ文学の「伝統をもたない伝
統」ともいえる本質的な部分は今日まで受け
継がれている。要するに、アメリカ文学はざ
っくりいえば「挑戦者の文学」なのだ。


おまけ


 4週にわたって、アメリカ文学を語ってき
た。ここで「自分でもアメリカ文学を調べた
くなった」という向きのために、ちょっとし
た補足を書いておこうと思う。
 第一に、アメリカ文学を本格的に研究・翻
訳している人として、柴田元幸氏がいる。講
談社現代新書から出ている『アメリカ文学
レッスン』あたりが比較的ラフに読めて面白
いのではないかと思う。

アメリカ文学のレッスン (講談社現代新書)

アメリカ文学のレッスン (講談社現代新書)

  • 作者:柴田 元幸
  • 発売日: 2000/05/19
  • メディア: 新書
 


 それと、この「ふぎと屋」で紹介したアメ
リカ文学は、その表現の多くを小学館『日本
大百科全書』に借りている。大きな図書館に
はおいてある筈なので、そちらを覗いてもら
っても楽しく学べると思っている。


 それじゃあ、今日はこのあたりで店じまい
としよう。良い夜を。