ふぎと屋【溺書ブログ】

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【もうひとつの非常事態】楡周平『ガリバー・パニック』(講談社文庫) #15

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どーも、ふぎとです。
今日は楡周平ガリバー・パニック』(講談社文庫)を紹
介するよ。

 

 


作品紹介


 7日、首相は非常事態を正式に宣言した。これで状況
はひとつ次のフェーズへ進んだように思われる。コロナ
の感染が現実に拡大する一方で、本作では九十九里浜
巨人が現れた。これがまた、ひとつの非常事態を告げる
ことになる。
 しかも、並大抵の巨人ではないのだ。日本人然とした
中年男性のようであり、「熊田工務店」の作業服を着て
いるようであり、日本語が通じるようである。コテコテ
の博多弁をしゃべる。
 スウィフトの『ガリバー旅行紀』では、第1篇で小人
族の島で縛られるガリバーの姿が描かれる。また、尾田
栄一郎『ONEPIECE』でも、ドレスローザに住む小人族
が「麦わらの一味」ニコ・ロビンを縛りつけた。
 だが、この巨人はそうはいかないようである。戦闘機
からの被弾、「600人分」のカレー摂取、突然の脱糞...。
これがファンタジーなら良かったのだが、現代日本(正確
には、90年代の日本)に現れてしまったのだ。誰もがギョ
ッとするのも無理はない。
 だが、本書が面白いのはここからだ。金の匂いに敏感
な者たちが、この不気味な驚きのまわりに編集を起動さ
せていく。建築業界では、巨人の力を借りて大規模工事
の期間短縮をねらい、広告業界は巨人の広告価値を切り
売りし、また製薬業でも巨人の採血からコトが動き出す。
 バブル崩壊後に書かれた本作は、終盤で巨人バブルを
崩壊させ(どのようにかは言わない)、痛烈に当時の社会
を諷刺するのだが、このことはいまはおいておこう。
 ようするに、事態にどう「あやかる」かということな
のである。「ふだん通りの週末」「ふだん通りのお出か
け」では全然あやかれていないのだ。この不気味な事態
にちゃんとギョッとしてから、その上で自分をどう編集
するか、だ。家に居座っての「読書編集」もあやかる方
法のひとつではなかろうか。


「人間ちゅうのは、どうあがいたところで、そこから逃
げられるもんじゃなか。気ぃばしっかり持って、がんば
りやい。」

 


この本をオススメしたい人


・「最近なんか暗いなぁ...」と感じている人
・面白い本が読みたい人
・滑稽な話で現実を笑い飛ばしたい人

 


ではでは今日はこの辺で。ふぎとでした。