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【文体という兵器】伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫) #25

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どーも、ふぎとです。
今日は伊藤計劃虐殺器官』(ハヤカワ文庫)を紹介するよ。

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 

 


作品紹介


 小説を批評するとき、「文体」ということが取り沙汰
されることがある。小学館の『日本国語大辞典』を見て
みると、文体とは「文章の語句・語法・措辞などに特徴
的に現われている作者の個性。その作者に特有な文章の
特色、傾向。スタイル」とある。ようするに、文体とは
文章の個性のようなものだ。では、ぼくたちがある文体
に触れたとき、ぼくたちはどんな影響を受けているだろ
うか。うまく言葉にするのは難しいけれど、ぼくたちは
文体に何かしら縛られているはずである。吉本ばなな
ように考えるには吉本ばななの文体が必要だし、カフカ
の文体を使えばカフカのように考えやすくなるだろう。
それなら、もし「虐殺の文体」が存在するとしたら?た
とえば第2次大戦時、ナチスはアーリア主義のフィクシ
ョンによってユダヤ人を次々にガス室へ送りこんだけれ
ど、こうした現象をもっと普遍的・潜在的な「文体がも
たらす作用」によって誘発させられる、としたら?本書
において、伊藤計劃はそこを突き詰めた。
 21世紀半ば。アメリカ軍の中で秘密裏に暗殺を請け負
う「特殊検索群i分遣隊」に所属するクラヴィス・シェ
パードは、内戦地域での「ダブル暗殺任務」に参加する。
ここで、ターゲットの来歴を確認した分遣隊メンバーは
一様に首をひねっていた。どうも、2人いるターゲット
の内、アメリカ人の方のプロフィールが素っ気ない。普
段は相手の考え方や行動のクセまで把握できるぐらい詳
細なプロフィールが明かされるのに、その男だけは何故
かカスカスなのだ。どうも、「上」がなにか隠している
感じがする。しかもその男は、暗殺現場となるはずの館
に現れなかった。本来いるはずだったのに、である。尋
常ならざる情報網も持っているらしい。
 この謎のアメリカ人、ジョン・ポールはその後も度々
分遣隊のターゲットとなる。だが、なかなか尻尾が掴め
ない。しかも、少しずつ明かされていくプロフィールも
どこか奇妙なのだ。なんと国防総省の資金で言語の研究
をしていたという。なぜそんな男がターゲットになるの
か。国防総省が言語の研究にお金を出した訳は。
 この記事を最初から読んでいる人は予想がつくだろう
が、この男は「虐殺の文体」を研究していたのである。
PR会社の社員として内戦地域に入り、平和活動を装って
「虐殺広告」を撒き散らしたのだ。


「......耳にはまぶたがない、と誰かが言っていた。わたし
のことばを阻むことは、だれにもできない」


 ラストシーンは言わないでおく。だが、ジョンの愛人
ルツィアとクラヴィスの出会いが、またひとつの奔流と
なって物語は輻輳していく。虐殺の文体を知ったとき、
人はなにを語るのか。是非その目で確かめてほしい。

 


この本をオススメしたい人


・読みごたえのある小説を探している人
・近未来が舞台の作品が好きな人

 

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者:伊藤計劃
  • 発売日: 2014/08/08
  • メディア: 文庫
 

 


ではでは今日はこの辺で。ふぎとでした。