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【創造的な模倣】世阿弥『風姿花伝』(岩波文庫) #30

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どーも、ふぎとです。
今日は世阿弥風姿花伝』(岩波文庫)を紹介するよ。

 

風姿花伝 (岩波文庫)

風姿花伝 (岩波文庫)

  • 作者:世阿弥
  • 発売日: 1958/10/25
  • メディア: 文庫
 


作品紹介


 どうやら現代社会というところは、「創造的人材」が
多く求められる場であるらしい。「創造的な人材の要件」
として、経団連は①主体性、②自己責任の観念、③独創
性の3つを挙げている。ここでは哲学的な議論をしたい
訳ではないので、「主体的とは」とか「責任とは」なん
てところへは突っ込まない。ぼくが気になるのは「独創
性」だ。たしかに「創造的」であるためには「独創的」
であるべきなのだろう。しかし、「独創性」は「ひとり
よがり」とはどう違うのか。本人が独創的だと思ってい
ることは、実はひとりよがりかもしれない。本当の意味
で独創性を発揮し、「創造的人材」となるためには何を
どう学んだらよいのだろうか。
 700年ほど前、世阿弥はそこをこそ深く考えた。彼は、
本名を観世三郎元清(かんぜさぶろうもときよ)という。
父である観阿弥とともに、彼は観世座という一座を組み、
そこで時の将軍であった足利義満にその才を見いだされ
た。強力なパトロンを得た世阿弥は、『高砂』『頼政
『井筒』『班女』『砧』『融(とおる)』など多くの謡曲
(能の楽曲)をつくるとともに、本書『風姿花伝』や『花
鏡(かきょう)』『申楽談儀(さるがくだんぎ)』といった
21種の芸能論を遺した。
 世阿弥の思想を読み解くキーワードは、ずばり「花」
だ。花とはなにか。彼は花というキーワードをしばしば
「まこと」とも言い換えた。これは英語でいうところの
Actuality、「真なるもの」を指す。その真を映し出すも
のとして「花」をおいた。
 このアクチュアリティというのは容易につかめるもの
ではない。プロのミュージシャンと同じ演奏は中々でき
ないのとおなじことだ。そこで、世阿弥は「まこと」が
外にあらわしているであろう「体(たい)」に着目し、そ
こを「まねぶ」べしと言った。体を身につけた姿は「風
体」となり、何とか体だけでもととのえようする思いが
「体裁」へとつながっていく。
 何にせよ、体をまねぶには稽古が必要になる。これは
「まこと」をはらんでいるかもしれない「古(いにしえ)」
を「稽(かんがえ)る」行為といえる。そこで起こってく
るのが「物学(ものまね)」だ。古の型を真似るのである。
ようするに、世阿弥は「物学」で稽古することによって
「まこと」へと迫ることを「まなび」としたのだ。
 世阿弥が言うところの「まねび=まなび」は、コンピュ
ータプログラミングにおいても見受けられる。「フレー
ムワーク」とか「デザインパターン」などと呼ぶのだが、
こうした仕組みはまさしく先人たちが錬磨してきた「型」
を真似ることに他ならない。そうして真似られた型は、
開発の状況・顧客の要望に応じて多様に破られていく。
そしてそのハテに、新たな型へと至るのだ。これこそが
世阿弥がいうところの「守破離」である。
 ここで冒頭の問いへと戻ってくるのだが、いま求めら
れているらしい「独創性」というものは、この守破離
「離」にこそあると思うのである。つまり、独創性を発
揮する前提として、古の「まこと」へと迫っていること
が挙げられると思うのだ。仕事の進め方、非常事態への
対応といった「型」を稽古したうえで、その型をどこへ
向けて破っていき、「新たな型」としてどう落としこむ
か。そこにあらわれてくるのが独創性だと思うのだ。だ
から、常に独創的である必要はない。折口信夫がいうと
ころの「マレビト」のように、節目節目でやってきてく
れればそれでいい。長年の住まいを引っ越した時、最初
の会社を転職で出てゆく時、いよいよ独立するぞという
時…。おのおのの「離」に合わせて影向(ようごう)する、
そんな性質だと思うのである。
 さて、2月ごろからやってきた「ふぎと屋」も、この
風姿花伝』の紹介をもって30冊目という節目を迎えた。
ぼくのところには、どんな独創が影向してくるだろうか。
そんな考えを肴に、今夜は少しく盃を傾けたい。


参考:
経団連HP
松岡正剛『日本文化の核心』(講談社現代新書)


この本をオススメしたい人


・独創的になりたい人
・ビジネスに効く古典を探している人
・小説以外の本を読んでみたい人

風姿花伝 (岩波文庫)

風姿花伝 (岩波文庫)

  • 作者:世阿弥
  • 発売日: 1958/10/25
  • メディア: 文庫
 


ではでは今日はこの辺で。ふぎとでした。