ふぎと屋【溺書ブログ】

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【「情報選別力」を鍛える】瀬木比呂志『リベラルアーツの学び方』(ディスカヴァー21) #38

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この記事から学べること

「構造的」に見る

 刺さった。「リベラルアーツ」の重要性、そしてそれ
をどう学び、活かすかというところのエッセンスをここ
まで濃縮した本はないと感じた。何より書名から「学び
方」と、方法にスポットを当てているのが良い。これは
ぼくが「編集工学」の提唱者である松岡正剛氏に私淑し
ていることもあるだろう。編集工学でも「編集という方
法」を通して、自己のありかた、情報のありようを探っ
ていく。詳しくは松岡正剛『知の編集術』(講談社現代新
書)を読まれたい。
 本書『リベラルアーツの学び方』の著者、瀬木氏は裁
判官として勤務する傍ら、研究活動も行っていた「理論
と実践」の人だ。2012年からは明治大学法科大学院
指導にあたっている。本書を書いていることでもわかる
通り、決して「専門バカ」な人ではない。本書では、基
本的な方法を戦略を一通り述べた後、いわゆる学問の分
野から、映画、音楽、美術に至るまで幅広い分野の基本
文献・作品を批評的に紹介している。造詣の深さが節々
に感じられ、とても楽しめた。
 さて、この「造詣を深める」、つまり「リベラルアー
ツを身につける」にあたっては、どういう考え方が重要
なのか。瀬木氏はこう説明する。


 まず重要なのは、個々の対象に接する過程で、批評的・
構造的なものの見方、物事のとらえ方を学ぶことだと思
います。


ぼくの言葉で言えば「本質をとらえる力」を磨くのがな
により大切だ、というようなところだろうか。そうする
と、《批評的・構造的なものの見方》はどうやって学ぶ
のだろうか。


 ポイントとなるのは、自分なりの批評の「定点」、基
準点を定め、それをしっかりと保つことです。定点を欠
いた批評は、自己の知識と見解の主観的・趣味的な羅列
になりがちです。


ぼくはこの文章を「一般的な物事に『絶対的な善悪』は
無い、だがおのおのがおかれた立場、バックボーンにす
る思想によって、『相対的な良し悪し』は生じえる。だ
からこそその学問・作品がどういう立場(=《定点》)に
立脚するか(しているか)、を明確にし、それにのっとっ
て価値判断を下すことが大切だ」という風に読んだ。こ
こでなにより強調されているのは「個々の著作・作品を
全体に位置付けること」ではないかと思う。おそらくそ
れが物事を《批評的・構造的》に見るということだろう。
 では、そもそもリベラルアーツとは何なのか。この問
いに答えるために、以下ではすこし「メタ・リベラルア
ーツ」を試みてみたいとおもう。

リベラルアーツの由来


 リベラルアーツの思想は、古代ギリシアに発祥したと
される。「肉体労働から解放された自由人にふさわしい
教養(パイディア)」という考え方から、当初は「自由七
科」と呼ばれた。具体的には文法学、修辞学、論理学、
算術、幾何学天文学、音楽の七つだ。これらを5世紀
ごろ、カッシオドルスらがキリスト教の理念に基づいた
カリキュラムを組むために、法学・医学・神学の基礎科
目として集大成させた。ここから中世にかけてはある種
の「学問ライセンス制度」なるものが存在し、この「自
由七科」を修めたと認められなければ「最高位の学問」
神学を学ぶことは許されなかった。
 大まかな「リベラルアーツ史」はこういったものだ。
では近年ではどういう位置づけになっているか。これに
ついて瀬木氏は以下のように書いている。


 実践的な意味における生きた教養を身につけ、自分の
ものとして消化する、そして、それらを横断的に結び付
けることによって広い視野や独自の視点を獲得し、そこ
から得た発想を生かして新たな仕事や企画にチャレンジ
し、また、みずからの人生をより深く意義のあるものに
する、そうしたことのために学ぶべき事柄を、広く「リ
ベラルアーツ」と呼んでよいと思います。


 この文章で瀬木氏は《自分のものとして消化する》と
いう言葉を使っているが、ぼくはここに「精神的な栄養
として学問・芸術を取り込み、自らの血肉とする」とい
う示唆を感じた。
 要するに、「消費」ではなく「消化」なのだ。個々の
著作・作品に触れたときに、それをしっかり消化できる
か。この「消化力」こそがリベラルアーツではないか
思う。言い換えれば「趣味の時間を今後に生かす技術」
とも言えるだろう。
 かく言うぼくも今、消化力を鍛えている真っ最中だ。
知識の欠陥を感じていた高校数学の復習に始まり、高校
物理、高校化学、そこから統計学、(特殊)相対性理論
進んできた。「エントロピー」を扱う熱力学や、「複雑
性の科学」にも興味がある。社会科学系で言えば、大学
で学んだ経営学会計学や、社会学をまたやりたい。漫
画では『鬼滅の刃』や『キングダム』を読みたいと思っ
ている。さて、これらをすべてやりきる日は来るのだろ
うか。方法はあっても時間がない。合掌―。