ふぎと屋【溺書ブログ】

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ルカ・利己的遺伝子・カンブリア爆発【長い歴史の短い一端 #1】

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 ロングラン企画のスタートだ。題して「長い歴史の短
い一端」。何を書くか、大まかな方針は決まっているけ
れど、どのくらいの「連載」になるかは書いている本人
にもわからない。1記事ごとになるべく独立させて書く
心算だから、気長に付き合ってもらえればと思う。では、
始めよう。まずは生命誕生の瞬間からだ。


ルカ・利己的遺伝子・カンブリア爆発


 本当の意味で生命が誕生したのは、いまのところ1度
だけだ。これは全ての地球上の生命がDNA(デオキシリボ
核酸)を遺伝情報の「乗り物」として使っている事実か
らも裏付けられる。その生物の母たる生物は、「ルカ」
(最終共通祖先)と呼ばれている。ルカは、「内外の境界
=細胞膜」、「代謝・恒常性(ホメオスタシス)」、「複
製」という特徴をもった好熱菌ー「熱水中の化学物質か
らエネルギーを取り出すことのできる」バクテリアーだ
った。
 ところでDNAについて少し補足すると、これはアデニン
(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という
たかだか4種類の「コード」からなる。DNA全体としては
二重の螺旋構造になっていて、一ひねりにはそれぞれAT
CGが10.2個ついている。コンピュータみたく言えば10.2
ビットだ。だから二重螺旋一ひねりで20.4ビット。これ
が幾つも連なっていて、最終的にはおよそ60億ビットも
の情報量になる。この情報群が「生命という様式」によ
って今日まで受け継がれてきた。生命の様式という言葉
に首を傾げる向きも多いと思うが、これは「生命はもと
もと情報のプログラムを"ネタ"にして形成された」(松
岡正剛)という考え方に基づいている。分子生物学では
「利己的遺伝子による生命維持戦略」なんて呼ばれたり
する視座だ。リチャード・ドーキンス利己的な遺伝子
やジョン・メイナード=スミス『進化とゲーム理論』が
詳しい。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

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進化とゲーム理論―闘争の論理

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 さて、こうしてルカが誕生したころ、地球には放射線
を伴うプラズマが太陽から降り注いでいた。「太陽風
と呼ばれる。このせいで地上はおろか、太陽風が届く浅
い海にも生物が進出できる環境は整っていなかった。だ
がそれから10億年が経ったころ、地球に磁場が生じる。
自転による効果で、地球の内部において鉄やニッケルと
いった液体金属が熱対流することで電流が生じたのだ。
ここのところを少し詳しく説明すると(これは読み飛ば
してもらってもかまわない)、地球の核内の流体運動と
しては、その内部ほど速く外部ほど遅く回転する非一様
回転と、上部と下部の流体が入れ替わる対流がある。非
一様回転は、ポロイダル(双極子型)の磁場を東西方向に
引き伸ばし、北半球で東向き、南半球で西向きの球面に
そった磁場をつくる。いわば「東極」と「西極」だ。こ
れがトロイダル磁場と呼ばれるもので、この磁場を上部
下部を入れ替える対流が南北方向に伸ばすことで、結局
もとのポロイダル磁場を再生すると考えられている。要
するに、これで北極と南極が定まることになる。
 この地磁気によって太陽風が曲げられたことで、27億
年前ころになると太陽風が地上に降り注ぐことはなくな
った。ただし、南北極は磁力線の起点・終点にあたるた
め、一部の太陽風はその圏内に入り込む。これが地表か
ら100~150キロ上空の電離層といわれるところで酸素や
窒素などとぶつかって発光する現象がオーロラだ。オー
ロラの色は太陽風が何とぶつかるかによって決まり、酸
素原子であれば白みのある緑、窒素分子であれば紫や青
色になる。何にせよこれで、生物が浅海へ、ひいては地
上へと進出する準備が1つできた。まず太陽光が届く浅
い海へとやってきた生物は、日光のエネルギーを利用す
るために光合成を行う細菌を誕生させた。シアノバクテ
リアだ。これは生物学的には「核膜に囲まれた核がなく、
クロロフィルを含み光合成を行うが葉緑体を持たない原
核生物の総称」というように定義される。ちなみに、シ
アノバクテリアクロロフィルは、細胞質にある「チラ
コイド」と呼ばれる平たい袋状の膜構造の中に存在する。
 さて、こうして光合成を行う生物が登場したことで、
地球上に酸素が行き渡りはじめる。ここから悠久の時間
をかけて、生物は徐々に進化を遂げていく。19億年前に
は全球凍結をきっかけに、DNAが核膜に包まれた構造を持
つ「真核生物」が誕生する。だが、こうした生物たちは
全てが生き延びられた訳ではなかった。地球という環境
はそれほど生易しいものではなかったのだ。今日では、
「ビッグファイブ」と呼ばれる大量絶滅が少なくとも5
回起こったと見られている。
 6.35年前から始まるエディアカラ紀では、「アヴァロ
ン爆発」と呼ばれる生物の多様化が進行した。ちなみに
このころの生物化石が、1947年にオーストラリア南部の
フリンダー山脈から見つかっている。「エディアカラ生
物群」と呼ばれる。エディアカラというのは、化石が見
つかった小さな丘の名前だ。
 こうして多様化したエディアカラの生物たちだが、5.
41億年前から始まるカンブリア紀までにはそのほとんど
が絶滅したと考えられている。しかしそのカンブリア紀
において、また生物の多様化が起こる。カンブリア爆発
だ。生物の分類では、細胞や生殖法などによって「門」
と呼ばれるものに分けるのだが、その門の種類が爆発的
に増加した。3門から38門だ。このころの化石を見ると、
「捕食するための鋭い口」や「身を守るための硬い殻や
棘」などがあることから、大型の肉食動物の登場によっ
て始まった食物連鎖と競争が、多様化のひとつの原動力
になったと考えられている。(つづく)


参考


出口治明『人類5000年史Ⅰ』(ちくま新書)
松岡正剛『知の編集工学』(朝日文庫)
平凡社『世界大百科事典』
小学館日本大百科全書
・旺文社『生物事典』
https://weathernews.jp/smart/star/aurora/mechanism.html
https://blog.goo.ne.jp/tos-1974/e/986c09e3522f4d1bd03a554b52f737ed